コラム 幻の出版化

 

今皆様がご覧になっているHP「お土産キーホルダーコレクション」は、もともと出版用に編集されたワードの原稿をウェブ仕様に変換したものです。某大手出版社のお土産キーホルダーに対する見解を、皆様に知っていただく貴重な資料として個人名、法人名は匿名化してそのまま展示します。

 それでは、なぜ出版するまでに至らなかったのか。それは、私の稚筆さもさることながら、費用(約300万円)と著作権の問題です。また、そのうち問題がクリアできたらチャレンジしてみたいなと思ってます。

 

拝啓

厳寒の候、○○様におかれましては、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

この度は、弊社まで大切な作品をお送りいただきまして、誠にありがとうございました。お預かりしました御著作『お土産キーホルダーでめぐる 日本一周の旅』につきましては、弊社原稿審査担当部署とともに丁重に拝読させていただきました。そこでは、全国出版をも念頭に置いた作品に対する出来栄えや面白さとともに、公共性、刊行の意義、社会的ニーズ、そして、読者獲得の可能性につきましても検討いたしております。本日席上にて挙がりました意見を、私の考えも交えていかに纏めてみましたので、まずはご一読ください。

 *作品講評*

◆日本全国を巡り、収集した各地の個性溢れるキーホルダーを収めた作品を拝見した。最初に『膨大なコレクションから厳選』とあるように、今回お送りいただいた以外にもさらに莫大な量のコレクションがあるのだろうということは容易に想像される。その土地固有の文化や歴史、さらには豊かな自然の風景が写し取られたキーホルダーからは、その地方色の豊かさが表れていて、非常に興味深い。かつては定番であったキーホルダーも、お土産の種類が増えるに従い、その膨大な数に埋もれてしまった感もなきにしにあらずだが、こうしてバラエティーに富んだ数々を目にすると、デザインや色に至るまで、さまざまな工夫が凝らされているのが見て取れ、非常に興味深い。代表的な風物が表されたキーホルダーの、ポストカード等では伝えることのできない、立体感のある佇まいは存在感があり、それぞれの地への読み手の関心を大いに引き付けることであろう。添えられた的を射た解説は、更なる旅情を誘うに違いない。

◆個々に眺めるてみると、一口にキーホルダーと言っても色や形などこれほどまでに様々なものがあることに驚かされる。かつては切手やコインと並び人気の収集アイテムであったものが、いつの間にかお土産の代表選手の座から姿を消して久しい。キーホルダーの多様性に伴い、益々影が薄くなることは寂しい限りである。だが、こうして心ある人によって取り上げられ丁寧に並べられると、実に見事にその土地土地の特色が表されていることに気づかされ、嬉しくなる。北は青森県恐山から南は沖縄県まで、名所、史跡などがデザインにも気を配られ、ひとつのキーホルダーの中に収められ、全国各地のものが一同に並べられたなら、さぞかし壮観であろう。これらを見終わる頃には、あたかも全国津々浦々旅をした気分にもさせられよう。あるいはそれに満足することなく、気に入った風景に目を留め、自らも出かけたい思いに駆られる読者もきっと出てくるに違いない。中でも、青森県の「ねぶた祭り」、福島県の「会津若松城」などの優れたデザインには目を引き付けられる。

◆解説もまた短いながら、読者の旅情をそそるつぼを心得たものである。キーホルダーといえば確かに観光グッズなのだが、こうして書かれた解説を読んでみると、単に楽しい観光の思い出の一こまという範疇を超えて、歴史にも触れ、知的欲求をも満足させる文章である。例えば、「血の池地獄」では「”血の池地獄”が売られている。買わないと赤鬼にしばかれそう」と笑いを誘う名文を披露し、歴史に名高い岩手県の中尊寺、「奥州藤原家三代の栄華を今に伝える名刹」に、一気に静かに佇む美しい金色堂の姿が広がる。キーホルダーに描かれた場面を解説することに加えて、著者の寄せる深い思いがこめられていることが、文章からは窺える。その土地の魅力を余すところなく伝えようとの著者の意図と、意気込みが気の利いた文章の端々から見え隠れして、さらに長い解説を読んでみたいという気持ちにもさせられる。写真と文章と、それぞれに魅力に溢れ読書を十分に楽しませる作品といえるだろう。

◆今回は膨大なコレクションの中から、東北と九州のものの一部をお送りいただいたのみであり、全部を拝見できなかったのが残念である。なお、ほとんどのものが表のみ掲載されているが、福島県の常磐ハワイアンセンター等一部のキーホルダーのように、裏面にもまた、凝ったデザインのものもあるのではないだろうか。出来れば意外なものについては、裏面も紹介することもさらに考えてみても良いかもしれない。また、途中著者なりの旅の感想や、コラム的なものを挟んでみてほしいところである。膨大なコレクションの中からこれらを選別した理由や、コレクションのきっかけなども、おそらく読者は知りたいところであろう。それらを著者の言葉で語ってほしいと思う。なお、ものによっては、「KH」「KHデザイン大賞」という説明があるが、おそらく読者には何のことだかわからないだろうから、もう少し説明を加えた方が親切であろう。最後にデザインについては諸権利関係をクリアにすることが求められる場合もあることを念頭においていただきたい。また、参考にした文献があれば、巻末に一覧化することをお勧めするとともに、歌詞については、掲載に当たっての権利関係の確認をお願いしたい。

◆「お土産キーホルダーは、ペナントと同じ道をたどってしまうのか?」表紙に記された著者の文章は、キーホルダーの置かれている現状に対する危機感の表れでもあろう。キーホルダー同様にお土産の代名詞であった「ペナント」も、いつの間にか目に触れる機会が少なくなってしまった。個々には、キーホルダーには同じ道をたどってほしくないとの著者の強い思いがこめられている。さらに著者は、決して、一般の人々からかけ離れた「お宝」として価値が高まるようなことは、望んではいまい。誰もが旅の思い出として、お気に入りの一つを探してほしいと野願いに他ならないのであろう。この作品を契機に、多くの人々にはキーホルダーの魅力を再認識してほしいと思う。本策を手に全国を巡る人々を目にしたいものである。

 

*御著作の刊行について*

御著作の作品評価に鑑み、弊社で書籍政策が可能か否かという観点から、さらに一歩踏み込んだ「弊社の新刊として全国流通可能な(=全国の書店に並べるにふさわしい)ものか否か」を検討させていただきました。そして作品のクオリティ・商業価値など多角的に判断した結果、「私家版にとどめてしまうには惜しい、十分な刊行意義が感じられる作品である。出版費用のご負担を仰ぐことにはなるものの、弊社編集スタッフの意見と○○様のご意向をすり合わせながら細部を整えた上で、是非とも全国流通の出版を実現させて見ては如何だろうか」との結論に達しましたことを、まずは正式にご報告申し上げます。

年々厳しさを増す一方の出版不況の最中にあって、弊社と致しましても出版可否の見極めについてはより慎重に行っております。事実ここ数年は単に「本になるか」どうかではなく、「読者が手にとって満足してくれるか」「書店陳列時、他の書籍と引けをとらないか」ということまで考慮し、そのレベルに到達していないと判断された場合には誠に残念ではありますがお断りさせていただくケースもございます。

そのような中にあって今回、全国規模での出版をお勧めできる運びとなりましたことを、私自身、担当者として大変嬉しく思っております。出版の詳細につきましては、別紙にポイントを絞り、簡単にまとめさせていただきました。弊社から観光されたアマチュアの著者の方によるヒット作・成功例なども併せてご紹介させていただいておりますので、そちらもご高覧の上、前向きににご検討くだされば幸いに存じます。

なお、今回は一部のみを拝見いたしましたので、全ての内容を拝見させていただいた上で、具体的な編集作業に入らせて頂く事となりますので、何卒ご了承願います。

以上、紙面でのご案内ゆえにわかりづらい点も多々あることと拝察いたします。ご不明な点や出版に際しましてのご相談などがございましたら、お気軽に、出版企画部:○○までご連絡を頂戴したく存じます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今年も寒い日々が続いておりますので、○○様には、くれぐれもお風邪など惹かれませんように。ご執筆も心よりお祈り申し上げます。

 敬具

 

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