イーハトーヴ(Ihatov)とは、岩手県(旧仮名遣いで『いはて』、Ihate)をエスペラント風に発音した言葉で、宮沢賢治の造語である。賢治が作品の中で使っていた「理想郷」を意味する言葉に端を発している。賢治が生前に出版した唯一の童話集である『注文の多い料理店』の宣伝用広告ちらしの文章には、「イーハトヴ」について以下のような説明がなされている。この広告文自体は無署名であるが、内容等から賢治自身によるものと推定されている。「イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。」
なお、文中に出てくる「大小クラウス」はアンデルセンの『小クラウスと大クラウス』、「少女アリス」はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』、「テパーンタール砂漠」はインドの詩人タゴールの詩篇「旅人の国」「渡し守」、「イヴン王国」はレフ・トルストイの『イワンの馬鹿』からの引用である。
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